自室の片づけをしていたら、大事にしまわれていた一枚のペーパークラフトを見つけた。
ペーパークラフトは作らないとただのペーパーなので、せっかくだし作ってみることにした。
そのブツはこちら。なんとも生々しいソデイカである。
これはいか連合代表のよしかが3年前に八戸イカ旅をした際に、「八戸市水産科学館マリエント」で入手したものである。
八戸市は全国的に見てもイカの水揚げ量がかなり多く、イカと関わりの深い街である。そのためか、「八戸市水産科学館マリエント」も結構イカ寄りの施設になっており(主観)、例えばイカレースゲームとか、イカに捕食させるゲームがあったり、イカの口の模型(でかい、動かせる)、銅の中に入れる大きなイカのオブジェ、そして情報量がものすごいイカ解説パネルなどが展示されていた。イカ好きからしたら天国のような場所だった。
その施設のはじっこ、少し薄暗く、誰も寄り付かないんじゃなかろうかという場所に、このペーパークラフトが置いてあった。他の魚介類のもあったが、今回は割愛。当時19歳のよしかは、「保存用」「配布用」「作る用」にと3枚拝借した。丁寧にクリアファイルに挟んで3枚とも保存されていたが、この度無事に発掘されたので、それぞれの役割を全うしてもらうことにした(1枚はまいけるに渡す予定)。
改めてソデイカのペーパークラフトをじっくり見てみよう。
非常に生々しいイカの姿。ソデイカそのものの写真を使っており、左の完成図のように、組み立てるとかなりリアルなものができそうだ。イラストではなく、本物の写真を用いるところにこだわりを感じる。
よく見ると左下に「国立研究開発法人 水産研究・教育機構」と書いてある。つまりこれはマリエントのオリジナルではないのだ。八戸市はスルメイカの漁獲量が多い街で、売りにするならスルメイカなのでは?なぜソデイカ?と思っていたのだがマリエントオリジナルじゃないならまだわかるな。
ソデイカも日本人にたくさん利用されていて、実は身近なイカなのだが、完全体を見たことがある人は少なく、イカ好きならともかく、そうではない人々にとっては知らないイカなのではないだろうか。どうしてソデイカにしたんだろうか。個人的にはソデイカの真っ赤な色とか、菱形に近いフォルムとか、特徴的な「袖」という器官とか、ペアで海岸に流れ着いたりする生き様とか、総合的に大好きなので嬉しい。ちなみにソデイカの体長は1mを超える。大きなイカだ。
前置きが長くなったが、早速ペーパーをクラフトしよう。
まずはハサミを使って丁寧に丁寧にイカ部分を切り離していく。少々画質が荒く、カクカクしているところがあるが、そのへんはうまく滑らかに成型する。全部で12パーツ、ペーパークラフトにしてはパーツが少なく簡単な部類に入ると思うが、写真に忠実にしっかり細かく切ろうとすると一気に難易度が上がる。よしかは手先が器用な方なので、うまく切り取れたと思う。こうして並べてみるとソデイカのお刺身みたいだな……
バラバラのパーツをしばらくねっとり眺めたら、次は実際に組み立てていく。ソデイカ部を切り取ったあとの抜け殻には、親切に作り方が詳しく書いてある。目を皿にしながら、パーツと対応させてゆっくり着実に組み立てる。今回は紙用ボンドを使ったが、張り付ける部分がそんなに細かくないので、どんなのりでもなんとかなりそう。
ここでパーツの説明に移る。完成図をじっくり見たら判別できると思うが、あえて説明しちゃう。
光が届く海にすんでいる多くの魚やイカは背中側(上側)の色が濃く、腹側(下側)の色が薄くなっている。これは敵から身を守るための工夫で、上から見ると背側の濃い色が深い海の色に溶け込むし、下から見ると腹側の薄い色が眩しい陽の光に紛れて見つかりにくくなるのだ。そう考えると、より色が濃いのは左上(頭部、腕)と左下(外套膜)になり、これらが背側、つまり上にくるように組み立てればよい。
外套膜の背側パーツが一枚続きなのに対し、腹側は3枚に別れている。腹の方がふっくらしているのね。なでなで。
あとはなんか説明に沿って適当にぺたぺたすれば完成する。
ジャジャーン!こちらが完成品です。
本物みたいでしょう?腕をちょっと丸めたのがポイント。生体に比べると少々、いや、かなり薄めに仕上がっていて、干物のようにも見える。ソデイカの干物……うーん食べてみたい!!いか連合のやりたいリストに追加しとこう。身が厚いので一夜干し程度じゃ水分が全然抜けなさそう。工夫が必要だな。
完成した紙のソデイカちゃんは、よしか宅のイカコレクションの仲間入りをし、隅々まで観察された後、現在ガラスケースに閉じ込められている。作って楽しい、飾って楽しいペーパークラフト、最高だな。ありがとうマリエント、ありがとう国立研究開発法人 水産研究・教育機構、ありがとうイカ。